ヒーロー像としての三億円事件犯人
三億事件は、未だに映画化されるなど風化していない希有な事件である。
事件から40年あまり経っているのにも関わらず、忘れられていない。
なぜ、忘れられていないのかということを事件の概要と共に考えてみたい。
奇抜な犯罪手口
1968(昭和43)年12月10日朝、東京都府中市の路上で偽装した白バイに乗った偽警察官が、
日本信託銀行の現金輸送車を止め「車に爆発物が仕掛けられている」などと偽って、
現金三億円を現金輸送車ごと奪って逃走した事件であり未解決事件である。
当時の三億円はおよそ現在の7倍の価値があるとされていて、現在であれば約21億円事件となる。
莫大な現金をごく短時間で、偽白バイなど小道具を使って強奪するという
奇抜な手口は大きく報道された。
モンタージュ写真
三億円事件と言われて頭に浮かぶのは、指名手配犯のモンタージュ写真である。
余談だが、このモンタージュ写真が犯人のものであるかどうかは疑問の声も上がっている。
一橋文哉氏の著書「三億円事件」によれば、このモンタージュ写真は別事件の犯人の写真を
ほぼ無修正で合成したものである可能性が濃厚であり、
また事件の目撃者の意見も当時の天候や接見時間から不確実ではないかという。
確かに客観的に文献を見て、恐らくこのモンタージュ写真は完全な別人物であるといえるだろう。
学生運動の流行による反権力志向
1960年の安全保障条約改定をめぐる安保闘争をはじめとして
1960年代には、ベトナム戦争反対運動など学生運動が盛んであった。
また三億事件が起こった1968年の1月には東大闘争が起こるなど、1968年は学生運動が盛り上がっていた。
このような盛り上がりをみせた学生運動は社会の主流派ではなかったかもしれないが、
当時、反権力ムードが大きな盛り上がりを見せていたことが伺える。
当時の情勢、ヒーロー像としての犯人
1960年代という特異な時代に起こった奇妙な三億円事件。
いまだに未解決事件である。この事件が未だにおおく知られるのは、
学生運動の流行による反権力志向と奇抜な犯罪手口、
印象的なモンタージュ写真が結びついてある意味当時のヒーロー像として歓迎されていたといえるのではないか。
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